令和7年度(2025年度)版ガイド
このページでは、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の概要、対象者、支給額、必要な書類、申請の流れ、注意点をわかりやすく解説しています。
初めて助成金を検討する企業の方でも、自社が活用できるか判断できる内容になっています。
正社員化コースとは?
キャリアアップ助成金の中でも、もっとも利用企業が多いのが「正社員化コース」です。
これは 有期または無期で働いている従業員を正社員へ転換した企業に支給される制度 で、企業の人材定着や処遇改善に非常に役立ちます。
令和7年度は、
転換区分(有期→正社員 / 無期→正社員)に関わらず、重点支援対象者に該当するかどうかで支給額が大きく変わる
という特徴があります。
専門用語が多く複雑に見えますが、ポイントさえ押さえれば活用しやすい制度です。
このページではできる限りわかりやすい言葉で解説しています。
対象となる転換区分(令和7年度)
正社員化コースは次の2つの転換が対象です。
有期雇用 → 正社員
更新を繰り返すアルバイト、パート、契約社員などが該当します。
無期雇用 → 正社員
無期転換の規定で無期契約社員になった従業員などです。
どちらの場合も、
就業規則に転換制度が明記されていること
転換後6か月の賃金が3%以上増えていること
など、共通の基本要件を満たす必要があります。
重点支援対象者とは?
令和7年度の大きな特徴として、
従業員の属性によって支給額が倍以上変わる という点があります。
重点支援対象者とは、厚生労働省が「より支援が必要」と位置づけている方のことです。
当てはまる場合は高い支給額になります。
【重点支援対象者の条件(a〜c)】
a:雇入れから3年以上働いている
b:雇入れから3年未満で、次のどちらか
① 過去5年以内に正社員として働いた経験がない
② 過去1年以内に有期雇用で働いていない
c:派遣労働者や母子家庭の母、父子家庭の父などの特定対象者
これらに該当すると、
有期→正社員 なら80万円、無期→正社員 なら40万円など、支給額が大きくなります。
支給額まとめ(令和7年度・中小企業)
下記は令和7年度版の正社員化コースの支給額一覧です。重点支援対象者に該当するかどうかで金額が大きく変わります。
| 転換区分 | 重点支援対象者(a〜c) | 通常対象者 |
|---|---|---|
| 有期 → 正社員 | 80万円 | 40万円 |
| 無期 → 正社員 | 40万円 | 20万円 |
当てはまるだけで倍額以上になることがあるため、対象者区分の確認は最重要ポイントです。
申請の流れ
キャリアアップ助成金は「順番を間違えた」だけで不支給になることがあります。
まずは流れを理解しておくことが安心の第一歩です。
以下は厚生労働省の図をもとにした、初めての方向けのやさしい解説です。
① キャリアアップ計画の作成・提出(実施前日まで)
最初に、「これから正社員化を行います」と国に知らせるための書類(キャリアアップ計画)を提出します。
ここが一番の落とし穴です。
計画提出より前に正社員転換をしてしまうと、原則として不支給になります。
② 就業規則の整備(制度が未整備の場合)
会社のルール(就業規則)に 正社員転換制度が明記されていること が必須要件です。
もし制度がなければ、転換前に就業規則を変更し、労基署へ届け出ます。
③ 正社員への転換
実際に契約社員・パート・無期契約社員などを正社員へ転換します。
この転換日は、
賃金比較や申請期限の起点となる非常に大事な日です。
④ 転換後6か月の賃金を支払う
転換後の賃金を 6か月間 支払う必要があります。
その間に転換前と比して 3%の昇給が確認できること が支給の条件です。
⑤ 支給申請(6か月終了後2か月以内)
6か月分の賃金をすべて支払ったら、そこから 2か月以内 に支給申請を行います。
申請は労働局やハローワークで受け付けています。
郵送・電子申請も可能です。
⑥ 支給決定(審査)
提出書類に誤りがないか、条件を満たしているかを審査し、問題がなければ支給決定です。
必要書類
助成金は「書類の整合性」がもっとも重要です。
少しの数字や文言のズレでも不支給になる場合があります。
以下は正社員化コースで必要になる主な書類です。
基本書類
(助成金の土台になる書類)
- キャリアアップ計画書
- 就業規則および改定後の届出書
- 賃金規程
契約・雇用に関する書類
(転換前後で条件が変わるため、必ずペアで揃える)
- 雇用契約書(変更前・変更後)
- 労働条件通知書(前後)
- 転換通知・辞令
賃金・勤務に関する書類
(6か月間の内容が審査の基礎になる)
- 賃金台帳(6か月分)
- 出勤簿(6か月分)
- 昇給の根拠資料
申請関係
(提出忘れがないよう注意)
- 支給申請書(最新様式)
- 添付書類チェックリスト
- 控え(提出日の証明を残す)
不支給になりやすいポイント
よくあるミスを事前に知っておくと、不支給リスクを大きく下げることができます。
正社員転換前のミス
- 計画書を提出する前に転換してしまった
- 就業規則に転換制度が書かれていない
転換後6か月のミス
- 昇給率が3%未満だった
- 出勤簿と台帳の記録に矛盾がある
申請時のミス
- 必要書類がそろっていない
- 6か月終了日の翌日から2か月を過ぎてしまった
- 契約書・通知書・台帳の文言が食い違っている
自社で活用できるか判断するためのチェックリスト
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、企業の状況によって利用可否が大きく分かれます。
以下のチェック項目に当てはまるほど、この助成金を活用できる可能性が高まります。
【対象となりうる従業員がいるか】
□ 有期契約の従業員(パート・アルバイト・契約社員など)が在籍している
□ 無期契約社員(無期転換された従業員)がいる
□ 正社員へ登用したい従業員が具体的に思い浮かぶ
【正社員登用の仕組みが整えられるか】
□ 就業規則に「正社員転換制度」を設けることができる
□ 賃金規程の見直し(基本給アップを含む)が可能
□ 正社員としての職務内容・処遇を定義できる
【賃金アップの見通しがあるか】
□ 正社員へ転換後、基本給を3%以上引き上げることができる
□ 昇給額を給与規程・辞令・契約書に明確に記載できる
【勤務・賃金の記録が整えられるか】
□ 出勤簿・賃金台帳を正確に管理している
□ 雇用契約書と実際の働き方に矛盾がない
□ 賃金の支払い遅延がなく、記録が整っている
【重点支援対象者に該当する可能性がある(該当すると金額が大きくなる)】
下記のいずれかに該当する従業員がいると、加算の対象になる可能性があります。
□ 3年以上勤務している
□ 過去5年以内に正社員経験がない
□ 過去1年以内に有期雇用の就労実績がない
□ 派遣労働者である
□ 母子家庭の母・父子家庭の父 など
※ 1つでも該当すれば金額が高くなる可能性があります。
【申請手続きに必要な体制があるか】
□ 正社員転換を「実施する前」に計画書を提出できる
□ 必要書類を揃える担当者が社内にいる
□ 助成金に関する基礎知識を社内でキャッチアップできる
チェック結果の目安
◎ チェックが多い → 活用できる可能性が高い
制度を理解しながら進めれば、比較的利用しやすいケースです。
○ 半分ほど当てはまる → 検討の余地あり
条件を整えれば活用できる可能性があります。
△ 少ない → 状況整備が必要
制度に合わせて就業規則・賃金制度を見直すことで活用の道が開けます。
まとめと次のステップ
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、制度の基本を理解し、必要な書類をしっかり揃えれば、決して難しい助成金ではありません。
むしろ、従業員の定着につながり、企業の働き方改革を前に進める大きなチャンス になります。
ただし、申請タイミングや書類の整合性など、注意すべき点を押さえておかないと不支給になりやすい制度でもあります。
もし「手続きが合っているのか不安」「うちの会社でも使えるのか?」と感じた場合は、社会保険労務士などの専門家へ相談することで、時間や労力を大きく節約できます。
このページの内容が、みなさまの会社のキャリアアップに役立つ第一歩となれば幸いです。
正社員化は、企業にとっても従業員にとっても大きな前進です。
制度を上手に活用しながら、働きやすい職場づくりを進めていきましょう。