助成金申請では、制度要件を満たしていることを“書類で証明”する必要があります。
そのため審査では、書類がそろっているかどうかだけでなく、書類同士の整合性が最も重要なポイントになります。
本記事では、助成金申請の際に必ず求められる基本書類と、整合性が確認されるポイントをわかりやすく解説します。
1. 助成金申請で必ず必要になる「基本書類」
助成金は種類によって求められる書類が異なりますが、共通して必要になる書類は次のとおりです。
(1)出勤簿(タイムカード)
- 出勤・退勤時刻
- 労働時間
- 残業・休憩時間
の記録が確認対象。
手書きの場合は特に読み取れるか、計算と整合が取れているかが重視されます。
(2)賃金台帳
- 基本給
- 各種手当
- 控除内容
- 時間数と支給額の一致
出勤簿との関係が最も注目される書類です。
(3)労働条件通知書(雇用契約書)
- 所定労働時間
- 契約更新の有無
- 時給・月給の金額
- 休日・休憩
実際の勤務状況や給与計算と一致しているか確認されます。
(4)就業規則・給与規程
助成金要件に影響する「制度のルール」を示す文書です。
企業規模に関係なく、助成金ではしばしば提出を求められます。
(5)36協定(時間外・休日労働協定届)
残業の実績がある場合は提出が必須。
労働時間管理が適切かどうか審査対象になります。
2. 審査で最も重視される「書類の整合性」とは?
整合性とは、“書類同士・書類と実態が同じ内容になっていること” を指します。
助成金審査で重視される整合性の例は次のとおりです。
(1)出勤簿と賃金台帳の整合性
典型的なチェック例:
- 出勤簿の労働時間 → 賃金台帳の支給時間と一致しているか
- 残業時間 → 割増賃金の計算が正しいか
一致していない場合、追加資料の提出が求められたり、不支給の原因になることがあります。
(2)労働条件通知書の内容と実態の整合性
たとえば:
- 契約上は「週30時間」→ 実態は「週20時間」
- 契約上は「時給1,200円」→ 台帳は「1,150円」
などは審査で必ず問題になります。
(3)就業規則の内容と運用状況の整合性
- 規定で「15分単位で丸め」と定め → 実務は1分単位
- 規定で「変形労働時間制」と記載 → 実態は通常勤務
などの場合、規程と実務が一致していないと判断されます。
(4)36協定と残業実績の整合性
- 協定の範囲を超える残業
- 協定の期限切れ
などの矛盾は審査上の指摘ポイントです。
3. 整合性が不足しているとどうなるのか?
書類に矛盾があると、次のような事態が発生します。
(1)不支給となる
もっとも多いケースです。
制度要件を満たさないと判断されます。
(2)追加書類の提出が繰り返される
審査期間が数ヶ月延びることもあります。
(3)悪意がなくても“不正受給”とみなされる可能性
【意図せぬ不正】を避けるためにも、整合性の確認は必須です。
(4)将来の助成金申請にも影響する
継続して矛盾が見られる企業は、信用性を損なう可能性があります。
4. 企業が事前にできる整合性チェックのポイント
助成金の種類に関係なく、以下を確認しておくと安全です。
(1)毎月、出勤簿と賃金台帳を突き合わせる
- 時間計算のずれ
- 打刻漏れ
- 手当の計算ミス
がないか確認します。
(2)雇用契約書を更新時に必ず見直す
条件変更があった場合は書面を更新し、実態と一致させることが重要です。
(3)就業規則を現状に合わせて改定する
業務形態やシフト制の変更があれば、規定の見直しが必要です。
(4)残業の実績と36協定の内容を比較する
期限切れや協定範囲外の残業がないかを月次で確認します。
5. まとめ
助成金審査では、書類が揃っているかどうかよりも“整合性”が重要 です。
- 出勤簿
- 賃金台帳
- 労働条件通知書
- 就業規則
- 36協定
これらを日頃から整備し、実態と一致しているかを確認しておくことで、申請がスムーズに進み、不支給リスクを大幅に下げることができます。
助成金は、正しい情報と書類整備によって、安全に活用できる制度です。
