助成金は中小企業の成長を後押しする制度ですが、仕組みが複雑で誤解されやすく、誤った理解のまま申請してしまうと、不支給や意図しない不正受給につながることがあります。
ここでは、中小企業が特に陥りやすい“助成金の誤解”と、その正しい理解についてわかりやすく整理します。
1. 誤解①:助成金は「無料でもらえるお金」である
助成金は返済不要ですが、無料で簡単にもらえる資金ではありません。
- 要件を満たすための労務管理
- 書類整備
- 実績報告
など、一定の事務負担が伴います。
特に労務書類の整合性が取れていないと、不支給や追加資料の提出が必要となる場合もあります。
2. 誤解②:申請すれば「誰でも必ず」受給できる
助成金には必ず明確な要件があります。
例:
- 雇用保険加入が必要
- 正社員化の基準に合致しているか
- 労働時間管理が適切か
- 賃金支払いが遅延していないか
「条件に合致していない企業」は受給ができません。
要件を満たすかどうかは、企業の実態と書類整備の状況に大きく左右されます。
3. 誤解③:外部業者に任せれば“完全に丸投げ”できる
助成金の申請は、社会保険労務士のみが代行可能な独占業務です。
しかし、近年は株式会社が“助成金代行”を営業し、実務を提携社労士に丸投げするケースが問題視されています。
このタイプの依頼には次のようなリスクがあります:
- 代行業務が違法になる可能性
- 要件に合わない申請をすすめられる
- 書類の整合性を確認されないまま提出され、不支給になる
- トラブルが起きても責任の所在があいまい
助成金の申請は “丸投げできる業務ではない” と理解することが重要です。
4. 誤解④:要件は「なんとなく満たしていれば」よい
助成金は要件の“解釈”が明確で、審査は書類の一致・実態との整合性で判断されます。
- 契約書の労働時間
- 出勤簿の実績
- 賃金台帳の支払い
- 就業規則との整合
- 36協定の遵守
これらが完全に一致していなければ、制度要件を満たしていないとみなされることがあります。
「たぶん大丈夫」ではなく、“書類で裏付けできる状態”でなければ審査に通りません。
5. 誤解⑤:助成金は企業の自由に使ってよい
助成金の多くは「目的が定められた政策的支援」です。
たとえば:
- 人材育成のための訓練
- 職場環境改善
- 正社員転換
- 働き方改革
など、具体的な目的が定められています。
制度の趣旨に沿わない支出は認められず、
結果として受給不可になる可能性があります。
6. 助成金を安全に活用するためのポイント
(1)一次情報で要件を必ず確認する
厚生労働省、労働局の公表資料で確認することが基本。
(2)労務管理を“整合性”の観点で見直す
助成金は労務管理の精度で成否が決まります。
(3)専門家は“社労士へ直接”相談する
株式会社の営業代行を介さない形が最も安全です。
(4)申請スケジュールを確保する
締切前は混雑し、問い合わせも増加します。
7. まとめ
助成金には誤解されやすいポイントが多く、
正しい情報を知らずに申請を進めると不支給やトラブルの原因になります。
- 要件は厳格
- 書類の整合性が最重要
- 外部業者の営業には注意
- 制度目的に沿って活用する
こうした理解を踏まえて進めることで、安全で確実な助成金活用につながります。
