助成金は返済不要で活用しやすい制度ですが、必要書類や労務管理の状況が整っていないと、申請を行っても「不支給」と判断されることがあります。
特に初めて助成金に取り組む企業では、制度の仕組みや要件を誤解したまま進めてしまうケースも少なくありません。
本記事では、助成金申請で実際によくある不支給事例と、事前に確認するべきチェックポイントをわかりやすく整理しています。
これから助成金活用を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
助成金が「不支給」になる主な理由
助成金は要件を満たせば受給できる制度ですが、審査では法令遵守・帳票整合性・取り組み内容の適正性などが確認されます。
以下は特に多い不支給理由です。
書類(出勤簿・賃金台帳・労働条件通知書)の不整合
不支給理由で最も多いのが、帳票の内容が一致していないケースです。
よくある例は次のとおりです。
- 出勤簿と賃金台帳の労働時間が一致しない
- 実際の時給と労働条件通知書の金額が違う
- 残業代計算の根拠と記録が合っていない
これらの不整合は「労務管理が適正に行われていない」と判断され、不支給につながります。
社会保険・雇用保険の加入漏れ
加入義務があるにもかかわらず未加入の場合、多くの助成金で不支給となります。
例としては、次のようなケースがあります。
- 社会保険の加入要件を誤解している
- 雇用保険資格取得の手続きが遅れた
- 「扶養内だから不要」と誤解して加入していない
法令違反に該当する可能性があるため、審査では厳しく判断されます。
申請前に取り組みを開始してしまった
助成金の多くは「事前着手禁止」です。
申請前に取り組みを始めてしまうと、対象外になります。
例:
- 研修を実施してから申請
- 設備購入後に制度を知って申請
- 就業規則の改定後に申請
申請前に取り組みを開始すると要件を満たした証明が困難となり、不支給の対象です。
取り組み内容が制度の要件に合っていない
助成金は制度ごとに対象要件が細かく定められています。
似ている取り組みでも対象外ということが多くあります。
例:
- 対象外の研修内容で申請している
- 正社員化助成金なのに、正社員要件を満たしていない
- 対象期間外の取り組みを申請している
制度の読み違いや勘違いが原因で起こるケースです。
必要書類の不足・記載ミス
助成金は「証拠に基づく審査」が基本です。
必要書類が不足している場合や、記載に誤りがあると不支給になる場合があります。
例:
- 添付書類が足りない
- 申請書に記載漏れがある
- 研修記録などの証跡が不足している
提出漏れや記載ミスは少なくありませんので、注意が必要です。
不支給を防ぐためのチェックポイント
不支給理由の多くは、事前準備を行うことで防ぐことができます。
最低限確認しておくべきポイントを整理します。
労務管理の「帳票3点セット」が整っているか
助成金審査では、次の3つの帳票が必ず確認されます。
- 出勤簿
- 賃金台帳
- 労働条件通知書
この3つの内容が一致しているか、差異がないかを確認することが最も重要です。
社会保険・雇用保険の加入状況に漏れはないか
加入漏れがあれば早急に是正が必要です。
特に、雇用保険資格取得日は審査の際に厳密に確認されます。
対象制度の要件を正確に理解しているか
助成金は「似ているようで異なる」制度が多く、要件も細かく異なります。
公的資料を確認し、誤解のないよう進めることが大切です。
必要書類を事前にそろえているか
制度ごとに必要な添付書類は異なります。
不足や記入漏れがないよう、事前に整理しておきましょう。
取り組み開始のタイミングに注意しているか
助成金は基本的に「申請前着手不可」です。
取り組み開始時期の管理が成功の鍵となります。
助成金活用の成功率を高めるために
助成金は仕組みを理解し、労務管理を適切に行っていれば、中小企業でも十分に活用できます。
次のようなポイントを意識すると、成功率がさらに高まります。
- 助成金ありきで取り組みを始めない
- 計画的に準備する
- 労務管理を適正な状態に保つ
- 不安がある場合は公的窓口へ相談する
制度を正しく理解し、適切に進めることが大切です。
まとめ
助成金申請では、書類不備や労務管理の不整合が不支給の大きな原因となります。
本記事で紹介した事例とチェックポイントを事前に把握し、制度を安全に活用できる環境を整えておきましょう。
