助成金は、企業が制度の条件を満たしていることを証明するために多くの労務関連書類が必要になります。
その際、審査でもっとも重視されるのが 「書類同士の整合性」 です。

整合性とは、契約内容・労働時間・給与額・実態がすべて一致していること。
この一点が不足しているだけで、不支給や追加書類の提出、最悪の場合は“意図せぬ不正受給”と判断されることもあります。

本記事では、助成金審査における整合性の考え方と、企業が事前に確認すべきポイントを詳しく解説します。


1. なぜ整合性が助成金審査の最重要ポイントなのか

助成金は公的な財源で運用されており、制度の公平性を保つための審査が厳格です。
そのため、次のような点が注目されます。

  • 労働条件通知書の内容が実態と一致しているか
  • 出勤簿と賃金台帳が一致しているか
  • 就業規則に沿った運用がされているか
  • 給与額・勤務時間の変更が適切に手続きされているか

特に、書類の矛盾があると「制度要件を満たしていない」と判断される可能性が高くなります。


2. 審査で見られる主な整合性ポイント

(1)労働契約書・雇用契約書と実態の整合性

  • 契約上の所定労働時間
  • 賃金形態・給与額
  • 契約更新の取り扱い
  • 試用期間の有無
    これらが実際の勤務状況と一致しているかをチェックされます。

(2)出勤簿(タイムカード)と賃金台帳の整合性

最も見られるポイントの1つです。

出勤簿の時間数 = 賃金台帳の給与計算
となっていなければなりません。

誤差や管理ミスが多いと、追加の書類提出が求められるケースが増えます。

(3)就業規則と運用状況の整合性

助成金は「会社としてのルールが整備されているか」も見られるため重要です。

例:

  • 就業規則では「15分単位で丸め」と記載 → 実際は1分単位で管理している
  • 規則では「変形労働時間制」 → 申請では「所定労働時間制」
    なども指摘範囲となります。

(4)36協定の内容と残業実績の整合性

  • 所定外労働が協定範囲に収まっているか
  • 協定が有効期限内か
  • 提出先(労基署)に不備がないか

残業時間が多い企業は特に注意が必要です。


3. 整合性不足で起こる主なトラブル

(1)不支給決定

条件を満たさないと判断され、助成金が受給できません。

(2)審査期間の大幅な延長

追加資料の提出が何度も求められ、1〜3ヶ月延びるケースもあります。

(3)“意図せぬ不正受給”と判断される

悪意がなくても、書類の不一致は不正受給として扱われる可能性があります。

(4)今後の助成金申請に影響

継続的な矛盾が確認されると、企業の信用性が下がることもあります。


4. 整合性を確保するために企業が行うべきこと

(1)労働条件通知書の更新漏れを防ぐ

給与変更、契約更新、所定時間の変更などは“書面での更新”が必要です。

(2)タイムカードと給与計算を毎月照合する

  • 残業計算
  • 控除項目
  • 支給日
    の確認を徹底することで整合性を担保できます。

(3)就業規則を現状に合わせて見直す

助成金要件に合わせた運用が必要な場合は、規則の改訂が求められることもあります。

(4)申請手続きは必ず社労士に相談する

書類の整合性確認は社労士が最も得意とする領域です。
不安がある場合は早めに相談することで、不支給を防ぐことができます。


5. まとめ

助成金の受給において、もっとも重要なのは「労務書類がすべて整合していること」です。

表面的な書類だけではなく、運用が制度に合っているかどうかも審査で確認されます。

  • 契約内容
  • 出勤簿
  • 賃金台帳
  • 就業規則
  • 労働時間管理

これらを月次・年次でしっかりチェックしておくことで、助成金の活用がスムーズになり、企業としての信頼性向上にもつながります。